開業を考える上では、開業に必要な手続きをただ済ませていくよりも、まずはどんなクリニックにするかを考えることが非常に重要です。

10年、20年と地域の皆さまに長く通院していただけるような、安定したクリニックを経営するには、「戦略」が必要です。ここでは、私が実際に体験したことをふまえ、クリニック経営についてご説明いたします。

クリニック経営における「戦略の一貫性」の大切さ

クリニック経営において、私自身が一番大切だと感じたのは、「戦略の一貫性」です。
「戦略」と聞くと小難しい印象となりますが、要は自身のクリニックにおいて、「患者さまにどんなクリニックだと思ってもらいたいか」ということです。クリニックを経営していく上では、競合などとの兼ね合いもあり、差別化を図る先生がほとんどだと思います。しかし、実際にその戦略を貫き通すことができるか、という部分においては難しい課題です。

開業までの流れ

経営戦略のパターン:手軽型
経営戦略のパターン:商品型
経営戦略のパターン:密着型

クリニックに限らず、経営戦略のパターンは3つに分類されます。
この中で、クリニック経営としては「密着型」の戦略が最も適していると私は考えています。
まず、手軽型は医療分野においてはありえません。
クリニックに自身の体を預けようと思っている患者さまが手軽型戦略のクリニックを選ぶことはないです。
商品型は、最新の医療機器や専門医のそろった総合病院の戦略です。
クリニックが商品型で勝負しても大病院には到底勝てません。
そうすると、町医者の立ち位置であるクリニックの経営としては「密着型」しかないと思います。

「密着型」のクリニック戦略の一貫性

さて、密着型戦略で経営すると方針を立てました。
患者さまに選んでいただくクリニックにするには、密着型をとことん追求する「一貫性」が大事になります。 インフルエンザ予防接種を他クリニックより割安にしたり(手軽型戦略)、最新のCTやMRIを導入したり(商品型戦略)は、密着型戦略からズレています。戦略の細かなテクニックは改めて個別にお話しさせていただきたいのでここでは割愛いたしますが、密着型戦略の一貫性が大事であり、他院との差別化を明確にし患者さまに選んでいただくクリニック作りが求められます。

さらに「他院が真似できない独自資源」があれば、強烈な差別化ポイントになります。
当院の独自資源はスタッフと医師である私自身です。
独自資源は当院を見学に来ただけでは決して真似ができません。この差別化される独自資源が、患者さまが当院を選んでくださる重要な点と考えます。

経営戦略のパターン:図

安定したクリニック経営をするには…

当然ですが安定した経営をするには、多くの患者さまにご来院していただかなければなりません。
そのためには、他院ではなく自分のクリニックを患者さまに選んでもらわなければなりません。
患者さまが選んでくれる点である「他院との差別化」を経営戦略として持つ事が大事になります。

当院は耳鼻咽喉科なので季節にもよりますが、今まで最も多い日で1日280人、夏場のシーズンオフでも100人を下回る日はありません。 私一人で200人以上の患者さまを連日診察するのは負担が多いので現在は午前80人午後80人と人数制限をして結果200人弱くらいを診察しています。1日に200人を診察するには1時間あたり30人程度を診ていかないといけません。
このスピードで、しかも患者さまがリピートしてくれる診療の質を保つには医師一人のがんばりでは不可能です。
そこで差別化のポイントとして重要なのがスタッフの働きです。
開業を考える皆さんのような立場の医師は、診療においてはベテランであり、診療の質で差別化を見出すのは難しいと思います。

当院でも開業後しばらくは、待ち時間が長く怒って帰ってしまう患者さまや、スタッフ対応に納得できずトラブルになる事もありました。
しかし現在はトラブルになる事もほとんどなくなりましたし、待ち時間が長くて帰ってしまった患者さまも後日改めてご来院いただいております。その違いは、患者さま目線にたった密着型のシステムを随所に盛り込んでいるということもありますが、スタッフの働きによるところが大きいと思います。
医師である私達は自分の診療にのみ集中し、それ以外の事は全てスタッフに任せられるという環境は、長く地域医療をする私達にとってとても重要なことと思います。

スタッフの働きを他院と差別化できるくらいよくするには、スタッフを満たすことが重要です。
給料面だけではなく、お休みや働きやすい環境、居心地の良さ、これらを満たす必要があります。

スタッフが満たされると次に患者さまが満たされます。
そうすると多くの患者さまにご来院いただけます。最後に満たされるのが医師である自分です。
医師である自分が満たされるのが最後であること、これが重要です。

スタッフ・患者さま・ドクター:

開業当初はどうしても多額の借入もあり不安があるので、経営者である自分を守りがちです。
満たす順番は、スタッフ→患者さま→医師である自分。これが、安定した患者さまに選ばれるクリニック経営の最大のポイントです。

開業前から戦略をたて、開業後は続けることが大切

「密着型のクリニック戦略の一貫性」という観点からみると、開業前から流行るクリニックと流行らないクリニックが明確に見えてきます。
ご自身の開業前からこの点が理解できていると、不安なく自信を持って開業できると思います。

そして「密着型の一貫性」を根気よく続けていけるかどうかは、やはり医師ひとりだけで解決するものではありません。
やろうと思っても日々の診察に追われるあまり、他のことにはどうしても手が回らないといった状況になりやすくなります。
また、開業してからではすでに患者さまやスタッフがいるため、急な方針転換は非常に困難です。
そのため、開業前からしっかりと考え、準備をしておくことが、今後の続けやすさにも大きな影響を与えてくれます。

開業前から戦略をたて、開業後は続けることが大切

開業までの流れ

クリニック開業までの流れ

開業支援の内容例

開業地の探し方

どの地域で開業するのか、先生がお住まい・ご勤務されている地域などを含めて、開業地について考えます。市場にでている物件だけではなく、私の不動産関連会社を通じて開業地を探すことも可能です。

借入銀行の選び方

当然ながら銀行からお金を融資してもらう必要があります。どのぐらいの費用が必要で、実際にその費用が借りられるのか、またどうすればスムーズに借りられるのかを考えます。銀行によって、金利や借入年数などの提示条件が変わってきます。比較検討することが大事です。

医療機器の選び方と価格交渉

診療科目や治療内容によって医療機器は多くの種類があります。あらかじめ何をどのメーカーから導入するかを決めます。機器は変更ができないので、電子カルテと予約システムの相性など細かく吟味しないといけません。

建物のデザイン設計や施工会社の選び方

建築士・デザイナー、建築会社、内装会社は担当範囲、そのクオリティや価格など実にさまざまです。 目的に合わせて選ぶことが大切です。当院は最も安い業者を選んだため、開業5年後以降修理費用がかさんでいる状態です。私のような失敗をしないよう業者選定はしっかりしたいです。

内装レイアウトや導線の相談

スタッフや患者さまの導線は非常に重要なポイントです。どんな点に気をつけるか、内装業者とあらかじめしっかりと打ち合わせする必要があります。じっくり時間をかけて吟味したいポイントと考えます。

ホームページの作り方

インターネットが基本となる現代では、クリニックのホームページは欠かせません。価格だけに囚われず、ホームページで何をするかと決めるのも大切です。

スタッフ募集・選考方法

院内スタッフの選考は自ら行う必要があります。給与や待遇なども事前にしっかりと決めておく必要があります。面接で見るポイントをお伝えします。

スタッフ教育の考え方

クリニック開業前にしっかりと研修を行い、クリニックのスタンスやルールをスタッフに伝える必要があります。スタッフと足並みをそろえて、同じ目標に向かう仲間意識を共有したいです。

開業前や開業後の効果的な広告の打ち方

集客のための広告について、その費用や内容などをガイドラインに添ってしっかりと考えていきます。


※その他、開業に関する細かいことをなんでも、経験を踏まえてアドバイスいたします。 かゆいところに手が届く、高性能な車のナビゲーションのような役割をしていきたいです。
※既に開業エリアや業者さまがお決まりの方でも、お気軽にご相談ください。
※標榜科目に制限はありません。私自身は耳鼻咽喉科ですが、科目によって経営が大きく左右するわけではありません。

開業地探しに始まり、融資先の銀行探し、スタッフ募集や研修のポイントなどご開業まで、さらに開業後のクリニック経営やスタッフ教育に至るまで無償でアドバイスいたします。先生の不安を取り除き、安心して開業し、その後の安定したクリニック経営に至るようにお手伝いしたいです。ご希望であれば、当院のスタッフを研修中および開業後1週間程度、新規開業現場に派遣することも可能です。耳鼻咽喉科以外の科の医療機器についてや、知らない土地の情報は私のつながりのある専門家に積極的に相談いたします。

開業支援費用:無料

※現地出張をする際の交通費、宿泊費のみご負担いただくことがあります(極力負担のないようにしたいと思っています)。